東京・六本木で10月6日から開催中の「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2023」。東京ミッドタウン主催の本イベントのコンセプトは、「デザインを五感で楽しむ」です。インテリアやグラフィック、プロダクト、ミュージック、フードなどを通して日常の中でデザインの可能性を広げるイベントです。
2007年の初開催以来、今年で16回目を迎える同イベント。2017年からは「国内外の第一線で活躍するデザイナーや国内外で注目されるデザインが集結し、デザインの魅力や可能性を身近に体感できるデザインの祭典」として、さらなる進化を続けています。
2023年のテーマは「いざなうデザイン-Draw the Future-」。持続可能性をめざし複雑化していく社会の中で、自然環境に配慮したものに触れる機会も増えてきました。そんないまデザインに求められるのは、人々をどのようにして持続可能な社会のための行動に“いざなう”か。
本展では、自然と人はどのような関係を構築するべきかにフォーカスした作品展示やワークショップを開催。その様子を、展示作品の紹介と編集部によるレポートでお届けします!
残土をテクノロジーで生まれ変わらせ、自然との対話にいざなう
芝生広場に点々と浮かぶ、インスタレーション作品「土の群島」。本作は、廃棄物として捨てられる土と自然素材の硬化剤を混ぜ合わせることで建材としての材料強度をもたせ、日本古来の工法から3Dプリンターのような最新技術までさまざまな方法で造形したもの。
「地球環境に配慮しながらも楽しく生きる暮らしを、デザインによっていざなう」と、制作者の浜田晶則さんは話します。建築や土木建設で大量に生まれる残土を、テクノロジーとデザインの力で生まれ変わらせ、循環していく未来をめざします。
実際に土の島に触れてみると、同じ素材にもかかわらず手触りや温度が微妙に違うことに驚かされました。それでも、どの島も触れていると安心感を覚えるのは、古代から私たちの暮らしのそばにある素材だからでしょうか。腰かけたり、もたれたり、島のまわりで遊んでみたり。大人も子どもも思い思いに土の温かみと触れ合えることのできる作品です。
【時間】11:00~21:00
【場所】芝生広場
心地よい風が、ゆったりとした日常へといざなう
ミッドタウン・ガーデンに広がる、風をモチーフにした無数のプロダクトによる花畑は「風の庭」という作品です。本作はアレクサンドラ・コヴァレヴァさんと佐藤敬さんによる建築家ユニット「KASA」によるもの。
柔らかな秋の風を受けると、木立に広がる一面の花々がなびき、風の形を浮かび上がらせます。慌ただしい都市生活の中では忘れがちな「風の心地よさ」を、ゆっくりと流れる時間と共に思い出させてくれるインスタレーションです。
本作の一番の魅力は、見る時間や場所、天気によってまったく異なる表情を見せること。風が自由気ままに形を変えるのと同じように、環境に合わせて形を変えます。次に「風の庭」を訪れた時どんな風が吹くのか。何回でも足を運びたくなる作品です。
【時間】11:00~17:30
【場所】ミッドタウン・ガーデン
水たまりのオブジェに映る問いが、行動変容にいざなう
ミッドタウン・ガーデンの小川から水が消え、代わりに流れるのは、水について語るさまざまな人の声。空っぽになった川底に点在する「水たまり」のオブジェの鏡面には、水にまつわる問いが書かれています。この作品は、デザインファーム・IDEOによる「Reflections on Water」。
世界中で取り沙汰されている水資源問題に対して、人々がアクションを起こすきっかけとなるよう制作された作品で、訪れる人が鏡に映り込む自分の姿とオブジェに刻まれた環境への問いを重ねる仕掛けなど、おのずと問題に向き合えるデザインになっています。
ミッドタウン・ガーデンの小川の道は、普段から散歩コースとしても人気の場所。そんな人々の日常に溶け込んだ道だからこそ、インスタレーションの異質さが際立ちます。「明日から水が買えなくなるとしたらどうするだろう?」水のない小川をのぞきこむと現れる問いかけに、当たり前が当たり前でなかったことに改めて気付かされました。
【時間】11:00~17:30
【場所】ミッドタウン・ガーデン
「TOKYO MIDTOWN AWARD 2023」受賞作品展示
東京ミッドタウンが主催し、才能あるデザイナーやアーティストとの出会い、応援、コラボレーションを目的とする「TOKYO MIDTOWN AWARD」は、今年で16回目を迎えます。会場では、デザインコンペ部門・アートコンペ部門への応募作品1,479点から選出された計16作品を展示。
展示期間中は来場者の一般人気投票による「東京ミッドタウン・オーディエンス賞」を実施。実際に会場に並ぶ作品のなかから、気になった作品に投票してみてはいかがでしょうか? 結果は 11月下旬に 「TOKYO MIDTOWN AWARD」 公式サイトにて発表されます。
【場所】プラザB1 メトロアベニュー
※展示期間中に一般人気投票をおこない、「東京ミッドタウン・オーディエンス賞」を選出します
「DESIGNART TOKYO 2023」展示
世界屈指のミックスカルチャー都市・東京を舞台に、世界中からインテリアやアート、ファッション、テクノロジー、フードなど多彩なジャンルをリードする才能が集結する「DESIGNART TOKYO」。
都内各所で展示がおこなわれるなか、東京ミッドタウンでは今回のテーマ「いざなうデザイン-Draw the Future-」に寄り添う3組のクリエイターが作品を展示します。この3組のうち2組(21B STUDIO、守本悠一郎)は過去に開催された「TOKYO MIDTOWN AWARD」のファイナリスト。同アワードで発掘されたアーティストたちの新たな活躍も堪能することができます。
【時間】11:00~20:00
【場所】ガレリア2F Aēsop前、Iucien pellat-finet前/横、ガレリア3F IDÉE SHOP/IDÉE CAFÉ PARC前
【クリエイター】21B STUDIO、守本悠一郎、田渡大貴
【主催】DESIGNART TOKYO 実行委員会
【協力】東京ミッドタウン
「いざなうデザイン」というテーマをもとに東京ミッドタウンに集結した数多くの作品たち。見た目が美しいだけでなく、自然との対話や行動のきっかけを与えてくれる、そんなデザインの本質を「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2023」で味わってみてはいかがでしょうか?
■Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2023
https://www.tokyo-midtown.com/jp/event/designtouch/
■Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2023 クリエイターインタビュー動画
建築家・浜田晶則さんインタビュー
https://www.youtube.com/watch?v=fjy81sAOrzU
文:濱田あゆみ(ランニングホームラン) 編集:萩原あとり(JDN)