事務機器やハード・ソフトウェアの販売、システム構築からサポートまで、マルチな内容でオフィスに必要な業務のサービスとサポートをおこなう大塚商会。実は、アドビ製品の販売実績が国内ナンバーワンであることをご存知でしょうか?
販売はもちろん、アドビ製品の選び方や使い方、ライセンス管理など専任スタッフによるサポート体制も万全で、2019年には全世界のAdobe製品パートナーのなかから選ばれる最高位の賞を受賞しています。
AcrobatやAcrobat SignといったデジタルドキュメントソリューションのAdobe Document Cloudから、PhotoshopやIllustratorをはじめとするクリエイティブツールを含むCreative Cloudまで、アドビ製品は多岐にわたりますが、近年注目を集める製品は、アドビが2021年にリリースした「Substance 3D Collection」です。従来の3Dデザインプロセスを効率化し、高品位なビジュアライゼーションを可能にする「Substance 3D Collection(以下、Substance)」は、3D制作初心者からプロまでさまざまな方に合う製品となっています。
今回、アドビ株式会社でSubstanceの市場開拓などを行うCreative Cloud Specialistの加藤修一さんに、同製品の特徴や製品を活用したプロダクト制作の実例、今後の3Dの可能性などをうかがいました。
コロナ禍以降、期待値が高まる3Dの有用性
――加藤さんは、アドビ株式会社でCreative Cloudを扱うデジタルメディアの部署に属していますが、どのような役割を担当されているのでしょうか?
製品の市場開拓などがおもな仕事です。みなさんが馴染みのあるIllustratorやPhotoshopなどのクリエイティブアプリケーションを含む、Creative Cloudの中に入っている製品すべてをカバーしています。特に、近年市場のニーズが高まっている3D領域、特に「Substance」を中心に担当しています。
――3Dを取り巻く現状について、近年、ビジネスシーンで大きな変化はありましたか?
従来「Substance」は、ゲームやエンターテインメントの業界での利用がメインでしたが、コロナ禍以前から3Dの企業内利用についてゲームやエンターテインメント業界以外の企業の方々ともお話しすることは多くありました。ただ、コロナ禍以前の2019年の段階では「理解はできるが現時点でニーズがない」といった反応が多く、ユニークさや便利さという観点で興味をお持ちいただいても、実業務の中ですぐに実用性を感じていただくまでにはいたらなかった印象です。
コロナ禍以降、3Dに対する考え方に大きな変化が出てきているように感じます。お客様と商談をさせていただく中でも、コロナ禍以前はアプリケーションに関するご紹介が多かったのですが、コロナ禍以降は市場にどのように3Dとして出していくか、より実業務の中での活用イメージをもって打ち合わせさせていただくことが多くなり、ゲームやエンターテインメント業界以外の方もニューノーマル時代における3D活用を考えなければならない状況になっているように感じます。
――ビジネスに3Dを取り入れることでどんなメリットが期待できるのか教えてください。
3Dは2Dと異なり、縦横に加えて奥行きを持っているので、技術的には物体の体積や表面積、重心などの計算ができるメリットや、光を遮った場合の影や物体同士の鑑賞など、検査・検証することも可能です。また、3Dを見る人の視点でも、空間の表現がより具体的にできるようになるため、2Dで見た場合の感覚に委ねられる部分、例えば背面を想像する、空間内の位置関係を想像する、といった見る人個々人のとらえ方による差異を少なくすることができる点も、大きなメリットとなります。
パンデミックは、人々の購買体験にも大きな影響を与えました。従来の「商品を手に取って確認する」という行動よりも、「画面上で商品を確認する」という行動が一般的になってきています。3Dを取り入れることで、開発者の視点からは商品がどのようなもので、実際に配置した場合にどのようなイメージになるかをシミュレーションすることが可能となります。また、購入する人の視点では想像で補完する部分が減るため、イメージと異なる商品を購入してしまうリスクを減らすとともに、はっきりしたイメージを掴めるため購買意欲の向上にもつながります。3Dを用いたAR(拡張現実)体験によって、返品率が30%削減される、顧客の購買意欲が25%向上するなど、実際にデータにもあらわれています。
高品質な3Dテクスチャーやバーチャルフォトを手軽に作成
――3Dの需要は大きく増えているんですね。「Substance 3D Collection」について、どのようなツールか具体的にうかがえますでしょうか?
「Substance」は、3Dの制作過程で必要な「テクスチャー」を作成する、3Dの高品位なビジュアライゼーションを可能にするソフトウェアで、これまで3DCGに触れたことがない方でも気軽に使えるスイート製品です。2021年6月に正式リリースし、「Substance 3D Stager」「Substance 3D Painter」「Substance 3D Sampler」「Substance 3D Designer」という4つのアプリケーションと、「Substance 3D Assets」というダウンロード型の素材提供サービスで構成されています。
――それぞれのアプリケーションの特徴を教えてください。
まず「Substance 3D Sampler」は、素材を撮影した写真やスキャンした画像データを、アプリケーション上にドラッグ&ドロップして取り込み、フィルターをかけることで、3Dモデルに貼付可能な高品質のテクスチャーを簡単に作成できるアプリケーションです。革や金属、木などさまざまな素材の質感を、凹凸や滑らかさ、光の反射加減などパラメータを調整することで簡単に表現することが可能です。
「Substance 3D Designer」もテクスチャーを作成するアプリケーションですが、こちらはゼロからテクスチャーを作成することが可能です。「Substance 3D Sampler」と同様に写真を利用することもできますが、模様や凹凸感、面の粗さなど、ノードを使った条件分岐を利用してテクスチャーをつくり上げるアプリケーションで、より突き詰める方は「Substance 3D Designer」を多くご利用いただいています。また、素材自体を意匠登録するようなケースでは、既存の素材の画像などは使用できないため、「Substance 3D Sampler」ではなく「Substance 3D Designer」をご利用いただいています。
「Substance 3D Painter」は、3Dモデルに直接ペイントができるもので、3D界のPhotoshopとも呼ばれているアプリケーションです。レイヤーの重ね方、マスクの加工や処理など、Photoshopに似た感覚で使っていただけるアプリケーションでありながら、ペイントや加工をしていくのは平面ではなく3Dモデルになります。
例えば、実物の服や靴のしわは、普通に置いておけばできるものですが、3Dモデルの場合しわを追加するのは手がかかる上、やり直しも大変です。「Substance 3D Painter」であれば、しわをテクスチャーとして書き足すことができ、レイヤーを非表示にすれば元に戻すことも可能で、パターン出しをするにあたっても非常に適したアプリケーションです。
4つめの「Substance 3D Stager」は、アドビが開発・提供していたDimensionをもとに再構築したアプリケーションです。パンデミックに伴う購買体験の変化により、バーチャルフォト(カメラやレンズを使用せずコンピューター上で作成された写真)の作成を迫られるシーンは増えていますが、従来の3Dアプリケーションですと、背景写真と3Dオブジェクトを組み合わせるにあたり、パースの調整や影のイメージ、立体空間での背景の置き方など、細かい調整が多くハードルの高い作業でした。
「Substance 3D Stager」は、アドビの機械学習とAIのテクノロジーである「Adobe Sensei」が、背景画像のパースと3Dオブジェクトの調整、影の調整などを自動で行い、本来時間のかかるバーチャルフォトの作成を簡単にするアプリケーションです。
そしてもう一つの「Substance 3D Assets」は、ストックフォトのようなダウンロード型の素材提供サービスです。商用でも自由に使える数千種類のマテリアルとともに、数百種類以上の3Dモデルを提供しており、そのままでもカスタマイズしても使用が可能です。ダウンロードしたオブジェクトをPainterやStagerに取り込んだり、SamplerやDesignerで作ったテクスチャーを当てはめることも簡単にできるようになっています。
ほかのソフトやアプリとの連携も可能
――「テクスチャーの作成」と一言でいっても、かなり幅広い表現ができそうで驚きました。Substanceを最初にご紹介したときの企業の方々の反応にはどのようなものがありますか?
やはり同じように驚いていただけますね。「Substance」を使うことで、3Dのビジネスでの活用に期待を持つことができたという企業の方も多いです。
ただ、多くの方が最初に気にされるのが、Mayaや3ds Max、Rhinoceros、CLO、Unityなど現在使用中の3Dソフトと置き換える必要があるのか、という点です。結論から申し上げますと置き換える必要はなく、先に挙げたような現在使用中の3Dソフトと連携してご利用いただくものとなります。
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