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2024年1月、アラブ首長国連邦・ドバイの中心部に新たなランドマーク「One Za’abeel」が誕生しました。リードコンサルタントを担当したのは、東京スカイツリー®を手がけた株式会社日建設計です。この複合施設は「無重力」を体現するダイナミックで独特なシルエットが反響を呼び、CNNの「The new architecture set to shape the world in 2024」に選ばれました。
今回は、同施設のチーフアーキテクトである中村晃子さんに、デザインのコンセプトや特徴などについてうかがいました。
■背景
ドバイ中心部にある「One Za‘abeel」は、オフィス・ホテル・住宅・商業施設からなる複合施設。その建設は20カ国・60社以上の技術者が関与する大規模なプロジェクトです。
2014年にフォスター・アンド・パートナーズなどが参加した国際コンペティションにより、日建設計が選ばれました。同社は多数の海外コンサルタントと業務調整をおこないながら、設計・監理を担いました。
■コンセプト
One Za‘abeelがある敷地は、ドバイ国際空港から市街地に向かうメインストリート。通り沿いには、ドバイのアイコンとして知られるBurj KhalifahやEmirates Towersが立ち並んでいます。このなかで、One Za‘abeelは日本的なシンプルな形状でありながら挑戦的かつ優雅なボリュームで、ほかのビルと一線を画しています。
■手法・特徴
最も目を引くのが、高速道路を挟む2敷地に各々配置した超高層タワーと、地上100m地点で世界最長のキャンチレバーを実現した「THE LINK」。アンシンメトリーかつ直線的に組まれ、6面のトラス構造とガラスカーテンウォールの相乗効果で、浮遊感を強調したデザインとなっています。
タワーの外装は、見る角度により多様な表情を見せるのが特徴。地面がせり上がった形状のポディウムは、4面に各用途のエントランスを設置。バルコニーや出窓でリズム感を出し、多色のアルミルーバーの内側に給排気設備などを配置することで、機能性とデザイン性を両立させました。
さらに、広々とした屋上庭園には、レストランや親水・緑陰空間など、さまざまなアメニティを配置しています。
■課題となった点
建築のうえで大きな課題となったのは、地上100mの2棟のタワーとTHE LINKを連結させる構造方法です。
検討の結果、タワー部は SRC造とすることで有効床面積を確保するとともに、タワーの接続部コンクリート壁内に高強度鉄骨斜材を配置しました。
一方、THE LINKは、主要な鉄骨部材をダイヤグリッド状に配置した剛な外殻構造システムとし、ねじれや変形を小さくすることで、無柱大空間を実現。2棟をつなぐことにより構造システムの安全性が高まり、超高層建築で課題となる強風時の揺れを効果的に抑えることに成功しました。
また、THE LINKは長さ約230m、重量約9,580トンにおよぶため、高所での作業を最小限にする必要があります。そこで、あらかじめ組み立てたブロックを順次道路上にスライディングさせ、後続のブロックを繋ぎ合わせる工法を採用しました。1回目のリフトアップでは重量約8,500トンの本体を12日間かけて2棟のタワーの間に取り付け、2回目のリフトアップにより、残るキャンチレバー先端部(重量約900トン)を4日間かけて所定の位置に設置しました。
One Za’abeelは、使い勝手や将来の更新のしやすさも考慮して、躯体や間仕切りを設計しています。時流に流されず、長きにわたってこの建築を使い続けてほしいとの願いが込められています。今後、ドバイのさらなる成長とともに、One Za’abeelが末永く活かされることを願っています。
所在地 | ドバイ、アラブ首長国連邦 |
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設計 | 株式会社日建設計(リードコンサルタント) |
施工 | ALEC ENGINEERING AND CONTRACTING |
構造 | 鉄筋コンクリート造、鉄骨造 |
敷地面積 | 31,100m2 |
延床面積 | 530,700m2 |
竣工日 | 2024年1月 |
撮影 | Koji Horiuchi(堀内広治)、Courtesy of One Za’abeel 、Hufton+Crow |