東京・豊島区のトキワ荘通り昭和レトロ館で2024年9月21日から10月14日まで開催された「おいしい!マンガ展 たべるシアワセ♡つながるココロ」。本展は、⾷がもたらす多幸感や心のつながりをテーマに、展示を通して来場者の「おいしい!」記憶やイマジネーションを呼び覚ます、新鮮な体験を味わえる企画展です。
「芸術の秋」と呼ばれるこの季節にふさわしい時期に開催された本展について紹介します!
会場のトキワ荘通り昭和レトロ館は、昭和20年代に建てられた「味楽百貨店」をリノベーションした施設。昭和の歴史・文化を次世代に継承するとともに、地域文化の発展や、地域の活性化に寄与することを目的としてしています。
本展は、施設二階の一室を使い、「おいしい!が呼び覚ます感情」「おいしい!でつながる」「甘いがもたらすトクベツなシアワセ」「おいしい!を感じる」「おいしい!が拡がる」という大きく5つのテーマで企画構成をしています。
会場では、さまざまなジャンルの作家・作品から選び出された全25作品の“おいしい”にまつわるシーンが展示されており、出版社や世代の垣根を越えた、ありそうでなかった貴重な企画展になっています。
本展の主催者は、ショッピングセンターや博物館、ホテルなどあらゆる空間を手がける丹青社。会場では、同社が取り組む「食文化×DXプロジェクト」として、食文化に関わる新たな体験コンテンツ「聴味庵(ちょうみあん)」も展示されています。
「聴味庵」は“視覚”と“聴覚”を刺激する、高精細映像と立体音響を取り入れたDX体験コンテンツ。食がもたらすシズル感を呼び覚ます体験を通し、「食べたい」「知りたい」「行ってみたい」などのリアルな欲求の誘発に挑戦しています。
本展の共催は、一般社団法人マンガナイトと豊島区。豊島区の担当者である文化商工部文化観光課 マンガ・アニメ活用担当課長の宇野貢彰さんは、今回の共催にあたって以下のようにコメントをしています。
「豊島区では、マンガ・アニメを活用したまちづくりに取り組んでおります。このたび、丹青社様より『マンガを通した食をテーマに地域連携も見据えた展示をしたい』というお話をいただき、今回の展示をおこなっていいただくこととなりました。
実際に展示を拝見し、マンガの『おいしい!』シーンや食材、料理の複製原画を見ると、食を通して得られる体験と重なりました。『おいしい!』『おいしそう!』という感覚が、DX展示によりさらに膨らむという非常に稀有な展示であったと感じました。また、膨らませた感覚を地域の活力へと還元できるよう、地域の方々と協力してグルメマップを作成していただくなど、地域連携にも結びつけた体験型のコンテンツとなっていることに深い感銘を受けました。
『おいしい!マンガ展』はトキワ荘マンガミュージアムからほど近いトキワ荘通り昭和レトロ館を活用していただきました。トキワ荘のあるまち豊島区でのマンガを活用した周遊企画となったものと考えております。今後もトキワ荘マンガミュージアムを中心として、マンガ・アニメを活用したまちづくりを進めてまいります」。
同館1階で「トキワ荘マンガミュージアム」との連携企画展の開催による人流があったことなどで、開催初日から堅調な来場者を記録できたという本展。「聴味庵」の“デジタル没入体験”が話題を呼び、東京新聞紙面やフジテレビ「めざましテレビ」でも取り上げられ、来場者数が大きく伸びたとのこと。
また、展示作品のひとつである『米蔵夫婦のレシピ帳』作家の片山ユキヲさんに来場したことや、来場者アンケート結果で85%から高評価を得たこと、「聴味庵」への好感度が高かったことも嬉しいトピックだと、展示担当者は話しました。
マンガ好き、おいしいもの好きにはたまらない本展。会場はコンパクトですが、さまざまな作品のおいしいシーンやおいしさを伝えるマンガ表現が一堂に会しているため、描写の仕方やオノマトペ(擬音語・擬態語)の相違がわかりやすく、興味深い展示でした。
https://www.tanseisha.co.jp/news/info/2024/post-54326
会期:2024年9月21日(土)~10月14日(月)
会場:トキワ荘通り昭和レトロ館 2F 多目的室2
時間:13:15~18:00(土・日・祝は10:00から/入館は閉館30分前まで)
取材・文:石田織座(JDN)