「デザインとアートの街」としてこれまで数多くのデザイン・アートイベントやクリエイターとのコラボレーションをおこなってきた東京ミッドタウン。そんな同施設では10月11日から「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2024」を開催しています。本イベントのコンセプトは、「デザインを五感で楽しむ」。インテリアやグラフィック、プロダクト、ミュージック、フードなどを通してデザインの可能性を広げ、日常生活を豊かにすることを提案するイベントです。
2007年の初開催以来、今年で17回目を迎える同イベント。2017年からは「国内外の第一線で活躍するデザイナーや国内外で注目されるデザインが集結し、デザインの魅力や可能性を身近に体感できるデザインの祭典」として、さらなる進化を続けています。
2024年のテーマは「つむぐデザイン-Weaving the Future-」。人々をとりまく環境では、持続可能な社会に向けたさまざまな変化が起きています。そんな中でより良い社会をつくるためには、変わりゆく物事を意識するとともに、ポジティブに受け入れることが大切です。
そのため本展では、未来への変化と人の心を“つむぐ”べく、デザインによってさまざまなものをより合わせ、新しいカタチやコトを生み出す作品の展示やワークショップを開催。その様子を、展示作品の紹介と編集部によるレポートでお届けします!
遊び心をくすぐりながら、人々の行動をつむぐ丘
芝生広場に現れた三次元的な曲面からなるインスタレーション作品「リレキの丘」。3つのリングがねじれるように交錯してひとつの地形をつくりあげている本作に、子どもも大人も好奇心がくすぐられます。「スワル」「ネル」「ハシル」「スベル」「ノゾク」「ノボル」……。遊び場としての一面だけではなく、10月20日には1日限定でパフォーマンスが実施され、演奏ステージや客席としても活用できる作品となりました。
「つむがれているイメージのない公共空間と“つむぐ”という行為をどう結びつけるか」そんな問いから作品が生まれたと作者のクマタイチ氏は語ります。本作では“つむぐ”を可視化するために、さまざまな行動を表現した「リレキシール」を土日祝日限定で来場者に配布。自分がリレキの丘でどんな行動をしたのか、作品に貼って履歴として残すことができます。芝生広場に集う多様な人々の行動が“つむがれ”て、新しい景色が生まれていく。これまでにない「公共空間」のあり方を提案する作品にぜひ触れてみてください。
【時間】11:00~19:00 ※雨天中止
【場所】芝生広場
コンクリートのオブジェ群がつむぐ“自身が住む環境とその過ごし方”
芝生が広がる東京ミッドタウンの庭に現れた、大きなうねりで構成されるコンクリートのオブジェ群。たわんでいる様子から一見布のようですが、触れてみると非常に硬いです。実はこのオブジェ群はコンクリートキャンバスという素材でできており、座ったり寄りかかったりと、オブジェの形に合わせて自分なりの使い道を見出せます。
本作品は、「都市の抽象化」をテーマにつくられたインスタレーション作品。便利なものに囲まれた都市空間で、私たちの意識や身体は受動的になりつつあります。だからこそ本作品では、普段気にすることのないミッドタウン・ガーデンの微地形を3Dスキャンデータで立体的に可視化することで、人々のさまざまな感性や行動を刺激し、自身の都市での過ごし方を再発見する機会を提供します。
【時間】11:00~19:00 ※雨天中止
【場所】ミッドタウン・ガーデン
「TOKYO MIDTOWN AWARD 2024」受賞・入選作品展示
「TOKYO MIDTOWN AWARD」は、東京ミッドタウンが才能あるデザイナーやアーティストとの出会い、応援、コラボレーションを目指したコンペティション。本コンペは今年で17回目を迎え、会場ではデザインコンペ・アートコンペへの応募作品1,767点から選出された全14作品を「TOKYO MIDTOWN AWARD 2024 EXHIBITION」として展示しています。
展示期間中は来場者の一般人気投票による「東京ミッドタウン・オーディエンス賞」を実施。実際に会場に並ぶ作品の中から、気になった作品に投票してみてはいかがでしょうか? 結果は 11月下旬に 「TOKYO MIDTOWN AWARD」 公式サイトにて発表されます。
【場所】プラザB1 メトロアベニュー
「DESIGNART TOKYO 2024」展示
世界屈指のミックスカルチャー都市・東京を舞台に、世界中からインテリアやアート、ファッション、テクノロジーなど多彩なジャンルをリードする才能が集結する「DESIGNART TOKYO」。都内各所で展示がおこなわれる中、東京ミッドタウンでは今回のテーマ「つむぐデザイン-Weaving the Future-」に寄り添う3組のクリエイターの作品を展示します。
今回展示をおこなう3組は、全員が過去に開催された「TOKYO MIDTOWN AWARD」の受賞者。本展示では、同アワードで発掘されたアーティストたちの新たな活躍を見ることができます。
【時間】11:00~20:00
【場所】ガレリア2F Aēsop前、lucien pellat-finet前/横
※「DESIGNART TOKYO 2024」の本会期は10月18日(金)~10月27日(日)
複雑で膨大なデータをつむぎ、未来を切り拓く視点に
ビジュアルデザインスタジオ WOWのデータデザインプロジェクト「InForms(インフォームズ)」が展示するのは、データと3Dデザインを掛け合わせて生成された映像作品。今回「レアメタル産出量」と「世界人口」の2つをテーマに、データをわかりやすく可視化するだけでなく、ビジュアルを通してデータの裏にある社会課題をひもときます。
序盤に展示されている「レアメタル産出量」は、「info Texture」という情報に質感を与える手法を用いて表現した作品。通常ならグラフを用いて表現されるレアメタルごとの産出量が、レアメタルの色味やサイズでビジュアル化され、直接的にデータを捉えることができます。
データという複雑な絡み合いの中から、いま見つめるべき要素をビジュアル化する。そんな「InForms」独自の視点から生まれた作品たちをぜひご覧ください。
【時間】11:00~20:00
【場所】プラザB1 メトロアベニュー
形を変えて、多様な価値観を結ぶ
「TOKYO CREATIVE SALON 2024」にて、赤坂エリアの赤坂サカス広場でデザインオフィス nendoがおこなったインスタレーション「ヤワラカサカ」。赤いクッションを編み込み、赤坂の起伏に富んだ地形を表現したインスタレーションが、素材をアップサイクルし、家具へと変身。赤坂の広場で人と人を結んだ作品が、形と場所を変え、多様な価値観を「結ぶ」存在に進化しました。
腰かけてみると、柔らかいクッションがしっかりと体を包み込んでくれる安心感があります。お買い物のひと休みに、この作品に包まれてみてはいかがでしょうか?
【時間】11:00~20:00
【場所】ガレリア 3F IDÉE SHOP/IDÉE CAFÉ PARC前
具象と抽象を行き来しながら、豊かな未来をつむいでいく
本イベントのキービジュアル制作は、デザインハブの構成機関である公益社団法人 日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)と連携し、JAGDA新人賞を受賞した岡﨑真理子さんへ依頼。本ビジュアルのモチーフはすべて、AIで生成した画像をコンピュータで線画に変換し、テクスチャを加えたもの。具象から抽象へ、そして抽象から具象へ連続するイメージの変化をビジュアル化しています。
「能動的な人間の意志の働きかけによって、機械の生み出す偶然に、ある概念的な意味をもたらすこと。大きな連鎖の中にいる人間の小さな働きかけによって、未来がより豊かなものに変わっていけばと願います。」と岡﨑さんは語ります。
「つむぐデザイン」というテーマをもとに東京ミッドタウンに集結した数多くの作品たち。過去、現在、未来へと時間をつむぐ中で、私たちはどのような視点を持つべきかを考えるきっかけを与えてくれます。そんなデザインの力を「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2024」で体感してみてはいかがでしょうか?
■Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2024
https://www.tokyo-midtown.com/jp/event/designtouch/
■Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2024 クリエイターインタビュー動画
建築家・クマタイチさんインタビュー
https://youtu.be/EY5PY9TOvRo?si=koKNHws1rwM2bmmg
文:濱田あゆみ(ランニングホームラン) 撮影:高比良美樹 編集:萩原あとり(JDN)